原発で国が前に出てエネルギー確保を

 

 低炭素社会の到来で国内のエネルギー需要は減少が見込まれる一方、中国など新興国の急成長で原油など資源の争奪戦は激しさを増す。それにどう対応するか。

 

 政府はエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」に、2030年までに原子力発電所を14基以上増やす目標を明記した。原油など輸入資源への依存を減らし、原発を軸に太陽光発電なども加え、30年のエネルギー自給率を35%程度に引き上げる。08年度の自給率は18%だから、かなり高い目標である。

 

 原発は運転中に二酸化炭素を出さない。ウランは輸入しているが、リサイクルして国内で長期間使えるため「準国産エネルギー」とみなされる。低炭素化とエネルギーの安定確保を両立するため、原子力を柱に据えるのは当然の選択である。

 

 問題は着実な建設をどう実現するかだ。計画は20年までにまず9基の増設をめざしているが、中国電力の上関原発(山口県)などで地元の反対が強く、早くも黄信号がともる。電力会社だけに任せず、国が関与を強めて立地を後押しすべきだ。

 

 立地自治体への補助金である電源立地交付金の見直しは急務だ。経済産業省は既存の原発を安定操業させるため、発電量に応じて交付金を増減する案を示している。だが自治体側は「地震などで運転が止まると交付金が減る」と心配する。

 

 小手先の改定でなく、30年以上前にできたこの制度のあり方を根本から見直すべきだ。国は公聴会などで地元の要望を丁寧に聞き、原発を地域振興にどう役立てるか、地元と一体となり知恵を絞ってほしい。

 

 検査制度の見直しも必要だ。国内の原発の稼働率は60%前後で低迷し、90%を保つ米韓などとの差は大きい。計画では稼働率を20年に85%、30年に90%に高める目標を示した。

 

 日本の原発は約13カ月ごとに止めて、平均140日かけて検査している。米国では運転中でも複数ある機器は交互に点検し、停止期間は40日弱だ。安全性を重視しつつ検査を効率化する工夫ができるはずだ。

 

 ウラン燃料を有効に使うには、使用済み燃料の再処理工場の早期の稼働が欠かせない。放射能の強い廃棄物の処分場の建設でも、国がもっと前面に出て場所選びを急ぐべきだ。

 

 基本計画は電気自動車や省エネ住宅などの普及目標も示した。これらにより30年に温暖化ガスを1990年比で30%減らせ、「50年までに80%減」をめざす政府の長期目標も射程に入るという。計画倒れにならないよう行程表も示してほしい。

 

(C)日本経済新聞 2010年6月27日