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■   気をおかない場所   ■

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 作りすぎた。

「……どうしようかしら」

 アリスは困った。
 眼前の温かい物体が、一人ではどうしようもなさそうな量になっていたからだ。

「……」

 少しばかり考えて、持ち運び用に魔法で物体を固定する。
 ふわりと飛び上がった理由は、決して目的地に行きたいからではなく、物体を減らしたいがためだと自分を納得させることにした。



「……どうしてここに来てるのかしら」

 胸がどうしてか落ち着かないのは、どうしてを考えないようにしているからだ。

「お? こんな夜中にどうした」

 背後からの声に驚いて振りかえれば、目的の人物がひょっこり生えている。
 手元の鍋を落とさなくてよかった、アリスは本当にそう思う。

「鍋なんか持って、宴会用の差し入れか? ただ、今日はそんな日じゃないぜ」
「分量を間違えて、作りすぎちゃっただけよ」

 その言葉で、だいたいの状況を把握する。

「ああ、お裾分けってやつか」
「……いらない?」

 気弱なアリスの声に、魔理沙は微笑んで答えた。

「いただくぜ」



 二人でほこほこの夕食を食べるのは、どことなく落ち着かなくて楽しい時間だ。
 だからアリスは、これからはたまに分量を間違えることにしようと思った。