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■   ある永遠の夢   ■

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 わたしには帰ってくる場所がある。
 それは、素晴らしいことだと思うわ。

 いつからか魔理沙は、わたしの家にこなくなった。
 二人ですごした一瞬は、昨日のようにも、遠い昔のようにも感じる。
 生命感のない、小説の物語のような、儚い記憶。

 あの日々は、わたしの目標にとても糧となった。
 だからわたしは、あまりその日々を思い出さなくなった。

 辿り着いたら、それまでの日々を思い返してしまうから。

 たまに訪れる博麗神社。
 幼いころに戦った巫女も、わたしを忘れてしまったようだ。
 なれなれしいわたしに、彼女は弾幕を仕掛けてきた。
 まるで別人に対するかのように、彼女は弾幕を撃ちこんできた。
 はじめて会った妖怪に対するかのように、彼女はわたしに弾幕を撃ちこんだ。
 彼女はわたしの知っている時の霊夢より、少しだけ険しい表情をしていた。
 本当に、わたしとはじめて会ったような表情をしていた。

 上海人形、蓬莱人形、これで何体目のあなたたちかしら。
 何度も何度も、同じものを作り続ける。
 似ているだけの、同じな、異なった、お人形。

 彼女たちは微笑む。
 遠い昔に壊れた、はじめての人形と同じように。

 わたしはアリス。
 『自立』人形を作るために生きる、人の形。

 わたしには、待ってくれる人形がいる。
 完成させなければ、いつまでも待ってくれる人形がいる。
 眼に見えなければ、傷つくことも、悩まされることもない、理想の人形が居続けてくれる。

 この場所に。
 わたしという、自立できない人の形の中に。
 『自立』した人形という、偽りの希望が眠っている。

 わたしには帰ってくる場所がある。
 永遠に変わらない、永遠に変わり続ける、人形たちとの変化の日々がある。
 それは、素晴らしいことだと思うわ……。

 わたしは人形を作り続ける。
 あの日と同じように、『自立』人形を目指して人形を作り続ける。
 決して実らないことを知りながら。
 どこまでも現実に目をそむけながら。
 彼女は人形を作り続ける、人形であり続ける。



 ――ただ瞳を開くだけで、そんな幻覚は消えていくのに――



 握りしめた手が汗ばんでいるのは、恐れたからでも震えたからでもない。
 くだらない未来を夢に見るほど、自分が疲れているとは思いたくなかったからだ。

 人形を作りあげる、そのためにわたしは『魔法使い』になった。
 母と別れ、故郷を旅立ち、魔界人を捨て、幻想郷に移り住んだ。
 『自立』人形を作るため、わたしでない、わたしの異なる形を作りあげるため。
 そのために、今のわたしがここにいる。
 なにも知らなかったあの日、おぼろげに見えていたはずの場所。
 あの日、空から落ちる中で夢見ていた場所が、今ここにある。



 ――なのに、瞳を閉じれば、そんな幻想がすぐに消えていくのは――